2009年10月付けで博士研究員として着任した永尾(松井)隆です。

■故郷

私は長崎県に属する離島「対馬」の出身です。高校卒業までを対馬で暮らしました。国境の島対馬は,古来より大陸と日本を繋ぐ文化・物流の窓口として特徴的な役割を果たしてきた島です。そのほとんどが山林に覆われており,動植物ともに独特な生物相を持った自然豊かな島でもあります。毎年今頃は,対馬の木であるヒトツバタゴが花を咲かせ,山々を真っ白に染め上げる様は見事です。  学部生から博士課程まで長崎大学に所属し,10年近くを長崎で過ごしました。長崎県本土も対馬同様,自然豊かで文化歴史的にも特徴的な土地です。カステラやチャンポンなど個性豊かで美味しいものがたくさんあります。最近は,坂本龍馬ゆかりの地や軍艦島なども観光客に人気です(写真1)。対馬と長崎,この2つが私の故郷です。機会があればぜひ訪れてみて下さい。

■大学時代の研究

卒業研究から博士課程までは,衛星観測による地表面温度データの高精度化・高品質化に関する研究に従事しました。地表面温度とは地球の陸域の表面温度のことで,地球の熱環境を表す重要なパラメータのひとつです。例えば,都市の表面温度は生活環境に,植物の表面温度は光合成効率に関係しています。また,地表面温度から土地の乾燥度や植物の水ストレスの状態も知ることができます。地球温暖化予測においても重要です。  陸域は山林,都市,砂漠などが混在するため,衛星視野内に存在する物質を特定が難しく,従来の手法では地表面温度の正確な計測が困難でした。そこで博士課程では,ハイパースペクトルセンサという特殊なセンサのデータを使った土地被覆に依存しない高精度な計測手法を考案しました(ハイパースペクトルセンサは,日本の衛星「いぶき」にも搭載されています)。  当時の研究室は,地表面温度データの検証作業も精力的に行っていました。検証とは,宇宙から計った地表面温度が本当に正しいのを確かめる作業です。衛星通過時刻に合わせて,温度計で地面の温度を計りながら地上を歩き回り,衛星データと比較するのです。平坦で広大な場所が必要なため,年に2回,アメリカまで行って観測していました(写真2)。非常に地味で地道な作業ですが,このような作業の積み重ねによって衛星データの信頼性は保証されています。

■東海大での研究

着任後は,中島研究室で,宇宙航空研究開発機構(JAXA)と欧州宇宙機関(ESA)が共同推進する雲エアロゾル放射ミッションEarthCARE(アースケア)地球観測衛星計画の研究に従事しています。EarthCARE計画では,2013年度の打ち上げを目指す人工衛星に搭載した4種類のセンサを使って雲や大気中微粒子(エアロゾル)の3次元分布を計測します。研究成果は,地球温暖化予測において最大の不確定性要因と指摘されている雲とエアロゾルの振る舞いの解明に役立てられます。  「雲を掴むような」という言葉があるようにその特性や性質を直接覗き見ることが難しい雲ですが,リモートセンシングはそれを間接的に実現する有効な手段です。現在私たちは,人工衛星のレーダーと光学センサのデータを使って雲の内部構造と誕生から降雨までの雲の一生を追跡・特定する研究を行っており,成果が出つつあります。まさにもう少しで雲を掴めそうです。


写真1:長崎県の軍艦島。名前はその外観に由来します。最近,上陸が一部許可されました。


写真2:アメリカのRailroad Valley Playa。広大な乾燥湖。日本とは違う真っ青な空。

中島研究室 – Nakajima Laboratory – "Dialogue with Blue Planet"
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